3 アメリカの大学に単位を認定してもらう

 

編入のタイプ

 

アメリカの大学システムおいては、ある大学から別の大学への編入は普通のこととして考えられています。

 

アメリカの大学は単位制ですから、別の大学で取った単位を認めてくれますし、日本の大学で取った単位も認めてくれます。

 

編入には3通りあります。

 

@日本の大学を卒業した後にアメリカの大学ヘ編入して第二学士号を取得する、

 

A日本の大学を中退してアメリカの大学ヘ編入して学士号を取得する、

 

B日本の短期大学を卒業して準学士号を取得後にアメリカの大学ヘ編入して学士号を取得する、という場合です。

 

編入して第二学士号を取得する場合、アメリカの大学では日本の大学で専攻していた分野と異なる分野を専攻するというのが基本です。

 

また、すでに日本の大学で学士号を取得している場合、アメリカの大学での第二学士号の取得を認めない大学もありますので、出願する際にそのことを確認する必要があります。

 

アメリカの大学の多くは、卒業単位の半分までを上限として、ほかの大学で取った単位を認めてくれます。

 

四年制の大学では、だいたい60単位を上限として編入単位を認めてもらうことが可能です。


編入単位認定の手順

 

ほかの大学で取った単位を査定するのは、Registrar's Officeのスタッフです。

 

単位移行の査定の手順は以下のように行われます。

 

@合格後に、講義要綱を基に日本の大学で履修した科目の内容を英訳したものを、入学するアメリカの大学のRegistrar's Officeに提出します。

 

大学によっては出願時に他の出願書類と一緒に提出を求めるところもあります。


ARegistrar's Officeのスタッフが、英訳された科目内容とその大学で提供している科目の内容が類似するものであれば、その科目の単位数も考慮したうえで単位を認定します。

 

B認定単位数と詳細は、学期初めに知らされますが、大学によっては1学期間まるまるその査定に時間をかけることもあります。


このような手順を経て査定された単位数が48単位であれば2年次後半、60単位であれば3年生前半に編入ということになります。

 

どのような単位が認められやすいか

 

それでは、どのような科目の単位が認められやすいのでしょうか。

 

まず、一般教養科目が挙げられます。

 

アメリカの大学の多くは、卒業要件として一般教養科目の履修を課しています。

 

基本的に1、2年次に集中して履修するのですが、自然科学系、社会科学系、人文学系、数学、芸術、体育などの分野から指定された科目と単位数を取ります。

 

自然科学系: 生物学、化学、物理学、天文学など。
社会科学系: 政治学、経済学、歴史学、社会学、心理学など。
人文学系: 文学、言語学、哲学、宗教学など。
芸術: 音楽、美術、演劇など。
体育: あらゆるスポーツの実技と理論


大学によって一般教養科目における必修科目数が異なりますが、日本の大学で一般教養科目をバランスよくなるべくたくさん取っておくと、有効に単位認定される可能性が高くなります。

 

出願したいアメリカの大学が決まっている場合は、その大学で義務づけている一般教養科目の要件をウェブサイトでチェックし、要件の一般教養科目と類似している科目(科目名が同じことが望ましい)を日本の大学で履修するとよいでしょう。

 

アメリカの大学では個々の科目に科目名(Introduction to Psychologyなど)の他に科目番号がついていて、一般に数字が上にいくにしたがって授業のレベルが高くなっていきます。

 

通常は100番台から600番台まであって、一般教養科目で履修する科目は100番台のものがほとんどです。


・100番台:1年生レベル
・200番台:2年生レベル
・300番台:専攻科目
・400番台:4年生レベルまたは研究科目

・500、600番台:大学院レベル


一般教養科目の要件は、いわばその大学の核となり、それを通じて書く力、分析力、思考力、表現力の養成に力を入れている大学もあります。

 

リベラルアーツカレッジでは特に一般教養科目の必修単位数が多く、50〜60単位をそれに充てているところも多くみられます。


一般教養科目のほかに、有効に単位を認定してもらいたい場合、アメリカの大学で専攻したい分野の科目の基礎レベルのものを履修しておくことです。

 

専攻ごとに必修科目や必要単位数が定められていますので、その指定に従って専攻分野の科目を履修します。


1、2年次に履修する専攻科目は、その分野を幅広く勉強して基礎を身につけることが目的で、細かい分野に特化された内容ではないため、他の大学で履修した単位が認められやすいのが特徴です。

 

たとえばビジネス専攻で留学する場合、あらかじめ日本の大学で履修していると単位が認められる可能性の高い科目として、ビジネス概論、リーダーシップ論、組織行動論、ファイナンス、マーケティング、会計学、ミクロ経済学、マクロ経済学、統計学、ビジネス倫理などがあります。


逆に単位が認められない科目としては、日本の大学の英語学科、英文学科、英米文化学科などで履修したものです。

 

たとえば、英語、英書購読、英文法、英会話といった科目は第二言語としての英語、つまり英語を外国語として学んでいるため、アメリカの国語としての英語の単位として認めてもらうことはできないのです。

 

単位が認められると

 

単位が認められると査定結果が大学側より届けられます。

 

書式は大学によって様々ですが、ひとつの書式を例にとって説明します。

単位認定査定の書式

単位認定査定の書式2

日本のABC大学で修得した51単位が、アメリカのXYZ大学で何単位認められたかという査定結果です。

 

表中「credits」の項が単位数となります。

 

単位は留学先の大学側によって、一般教養(General Education)、専攻(Major)、自由選択(Free Elective)という3つのカテゴリーに分類され認定されます。

 

一般教養科目ではABC大学で修得した世界史(World History)、日本史(Japanese History)、日本と世界(Japan and the World)、社会科学入門A (Introduction to Social Science A)、現代社会概観(Aspects of Modern Society)、フランス語I (French T)が、一般教養科目として認められています。

 

本学生は編入先のXYZ Universityにおいて経営学(Business Administration)を専攻する予定です。

 

専攻科目では、日本のABC Universityで履修した旅行業管理(Managernent of Tourist Industry)、ビジネス管理入門(Introduction to Business Management)、国際経営学(International Business Administration)が、編入先のXYZ UniversityでそれぞれMGT308、BUS 150、MGT340という経営学の専攻科目として認められています。

 

日本の大学で履修した科目が、編入する大学において一般教養と専攻のカテゴリーにあてはまらないものの、その大学で提供されている科目の内容に類似している科目は、自由選択科目(Free Elective)として認められます。

 

その他、編入単位として認められていない科目があります。

 

No Credeitsと表記され0となっている単位です。

 

たとえば前述の「英語」関係の単位である、英語コミュニケーションIとII(English Communication T,English CommunitaionU)です。


これらは第二言語としての英語(ESL)と判断されたため認められませんでした。


また、旅行業(Tourist Industry)という科目も認められていません。

 

旅行業管理(Management of Tourist Industry)という科目は専攻科目として認められていますが、同様の科目は重複して認めないという判断があったためです。

 

しかし、こういったケースでは大学側との交渉によっては認めてもらえる可能性もあるため、大学到着後に単位を認定するRegistrarというRegistrar's Officeのスタッフと確認すべきでしょう。

 

経営管理数学(Management Information Mathematics)の項にあるUnder Evaluationとは、単位認定をするか否かを査定中という判断です。

 

科目内容によって認められる可能性が大ですので、どのような内容を勉強したかを書面などを通じて詳しく説明すれば今後認められる可能性が高い単位です。

 

結果、この学生は日本のABC Universityで履修した51単位中、アメリカのXYZ Universityにおいて37単位の認定は確定となり、さらにManagement Information Mathematics (Credits Pendingとなっている4単位)が正式に認定されると41単位になるわけです。

 

短大・高専・専門学校の単位の認定

 

短期大学(短大)を卒業して留学したいと考える人も結構います。

 

日本の大学も短大出身者の編入をたくさん受け入れていますので、日本で編入するよりも思い切って海外の大学ヘ行こうと考えるわけです。

 

また、短大を出て就職してバリバリ働きたい人にとって、大企業であればあるほど、短大卒ということだけで給与体系が違ったり、出世の道が閉ざされていたりということに矛盾を感じるようです。

 

とくに日本の女性の場合、自分の方がずっと能力があるのに、四大卒の男子が上司になるのが納得いかないという気持ちが強く、思い切ってアメリカの四年制大学を卒業したいと考えます。

 

しかし、短大では英文科・英語科という学科が多く、またそういう学科出身の人ほど留学したいものなのですが、アメリカの大学がどうしても単位として認めたくないというのが、こういった日本の大学での英語の授業なのです。

 

彼らにとって英語は「国語」に該当するため、なかなか単位としては認めたくありません。

 

英会話とか英文法とか英語講読といったものは、当てはめる科目がないからです。

 

したがって、どうしても認められる単位数が少なくなる傾向があります。

 

ですから、留学を考えている短大生は、たとえ卒業のための単位として必要なくても、1年生の時からなるべく一般教養の科目を中心に取っておく必要があります。

 

高等専門学校(高専)からの編入の場合は、5年制の高校3年間+大学2年間に相当として、留学の際は短大卒と同等に扱われます。

 

高専から日本の大学に編入できるシステムがかなりできあがっているようですが、アメリカの大学に行く場合、大学にあたる1、2年生で履修した科目の専門性が強く、一般教養科目に当てはまらないケースがあるため、認めてもらえる単位が少ない可能性があります。


それでもペースを上げてアメリカで勉強すれば、2年半くらいで四年制大学を卒業することが可能です。

 

また、日本の専門学校の単位を認めるかどうかという点ですが、原則として日本の文部科学省が、短大を含め大学と認めていないものはダメです。

 

もちろんアメリカにおいては、全てが絶対にダメということはありませんので、交渉する余地はあります。

 

日本の専門学校や留学準備をする予備校が、アメリカの大学と提携して、取得した単位を認めてくれると銘打っているところがあります。

 

しかし、実際にアメリカに行ったらダメだったというケースも多いのが現実です。

 

そんな事態を避けるために、これらの学校を通じて、渡米前にアメリカ提携大学から単位認定について何らかの確認をもらっておく必要があります。

 

留学を考えている人は、アメリカの特定の大学に単位を認めてもらえる専門学校や留学予備校に行くより、短大、夜間大学、大学の通信教育、放送大学などで勉強する方が、その単位をアメリカのどこの大学でも認めてもらえるので、それらを優先した方がよいでしょう。